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パラグアイ:ステビア栽培の現状
パラグアイにおけるステビア栽培事情
青年海外協力隊員 上野真司
ステビアという薬草をご存知でしょうか。
パラグアイではグアラニ語でkaa Heeと呼ばれ、マテ茶に甘みを加えるためなどに昔からりようされてきました。
ステビアはパラグアイとブラジルにまたがるアマンバイ山脈が原産地とされ、1899年、植物学者モイセス・ベルトニに発見されて以来、天然甘味料の原料として研究されてきました。
この植物は多年草のキク科植物で、背丈は40~80cm、見た目はミントに似ています。
そして、この葉を食べると驚くほど甘いのです。この驚くほどの甘さの元はステビアの葉に6~18%含まれているステビオサイドやレバウディオサイドAなどの甘味成分で、 それら甘味の成分を精製して作られるステビアの甘味の量は1gで砂糖300g分の甘さがあるとされています。
日本では、農林水産省 が30年以上前から天然甘味料として注目し、日本の各農業試験場で栽培試験が行われてきました。 ステビアの持つ主要な甘味成分ステビオサイドは独特の苦みと香りをもち、甘味料として利用するには、その苦みと香りの除去が欠かせないとされてきました。
1970年代、それまで合成甘味料として使用されてきた、チクロややヤズルチが発癌性の疑いから使用禁止になり、 天然甘味料の需要が増加しました。これにともない、日本ではステビアから甘み成分 (ステビオサイド)を抽出精製し、苦みを除去する製法が次々に開発され、それから使用が拡大しました。
現在、日本においてステビアは低カロリーの天然甘味料として、漬け物や菓子類、醤油、スポーツドリンク、炭酸飲料、缶詰、インスタントラーメンなど多岐に わたり利用されています。また、パラグアイやブラジルなど南米諸国、韓国、中国、台湾、アメリカなどの国々おいてもステビア甘味料が用いられています。
日本におけるステビアの栽培面積は100haほどで、原料の多くは中国にて日本人による管理栽培されているところからの輸入によるものです。 また、パラグアイから日本へ少量ながら輸出されています。
パラグアイでは、1960年代にコンセプシオン県で少量ながら本格的なステビア栽培と加工が始まったようです。
その後、パラグアイ国内で大規模なステビア精製工場の建設が計画されたものの、精製工場の操業には至らず栽培面積の拡大には繋がりませんでした。
ところが最近になりその栽培面積が拡大しつつあります。これは、ブラジルのパラナ州マリンガにステビア精製工場を持つステビアフヤルマ社(Steviafalms Indaustria S/A)が、パラグアイ全土において 栽培促進キャンペーンを実施し、栽培面積の拡大を勧めているためです。
大上氏(JICA専門家/農牧省企画総局農牧政策アドバイザー)の調査によると、ステビア精製工場は1986年にブラジル銀行、ステビファルマ社、マリンガ大学 の三者が協定を結び設立しました。
原料のステビアは、マリンガ周辺の農家(300ha)が栽培したものを用いましたが、精製されたステビアは苦みが強く、商品としての販売は行えませんでした。 大学の小規模試験プラントでは上手くいった精製が、工場の本格的な精製段階で予想外の結果となり,投資家グループが去っていくこととなりました。
その後、ステビアファルマ社は独自の技術開発によって苦味の除去に成功し、1998年、本格的な販売に乗り出しました。 (パラグアイ国内のスーパーなどで、同社が製造した粉末又は液体のステビア甘味料が販売されています。) これに伴いステビア栽培促進キャンペーンを勧めているわけです。パラグアイから原材料の入手を希望している理由として同社は次のように説明しています。
パラグアイ産のステビアはステビオサイド含有量が高い(マリンガ産8%・パラグアイ産12%) パラグアイは農地が新しく生産量がよい(マリンガでは潅漑の下、4トン/葉/年の収量であるが、パラグアイでは5トン以上の収穫可能)。
現在、ステビアファルマ社のキャンペーンを受けて、セントラル県やサンペドロ県などの県庁や市役所、農協などが同社と契約し、 それぞれの地域で栽培を維持しています。
私が青年海外協力隊員として活動しているミンガ・ボラ市においても、昨年(2002年)市役所と農業信用金庫が同社と契約し、 ステビア栽培が始められました。契約の概要を大まかに説明すると、「ステビアファルマ社は、栽培に必要な技術的サポートを行い、 今後5年間ミンガ・ボラで生産されるステビアは最低価格(乾燥葉でキロ当たり3000グアラニ)を保証し全量買い取る。 市役所と農業信用金庫は最終的に100haの栽培面積を確保できるようにステビア栽培の普及を農民に行う。
栽培を始めるに当たって必要な資金は農業信用金庫が契約した農民に対して貸し付ける。 農民が収穫したステビアの乾燥場は市役所に集荷しステビアファルマ社に出荷する。 また、農民が他業者に販売することは禁止されている。」となっている。
ステビア栽培は、ヘクタール当たり8万株ほどの苗を植え付けることから始まります。 現在パラグアイでは主に播種から育苗を行っているようですが、挿し目、株分けによる苗の生産も可能です。 年に3~4回の収穫をすることができます。収穫は、マチュテで茎ごと刈り取り十分に乾燥させた後、ビニールシートの上で叩いて、茎から葉を落とします。 そして、葉に混ざっている小枝などを取り除き、葉の部分だけを袋に詰めて出荷します。ヘクタール当たりの収量は、1年目は脇芽が発生していないため 600~800kgとあまり収量が望めませんが、2年目以降、株の更新が必要な4~6年後まで、 ヘクタール当たり1500kg~3000kgの収量が可能であるとされています。 現在(2003年3月)、取引価格は、乾燥葉でキロ当たり4000グアラニー前後となっています。 2年目以降、年間に3~4回収穫し1500kgの収量を>確保すれば、ヘクタール当たり600万グアラニーの粗収益を得ることができます。
ステビア栽培に必要な実質的な経費は、初年度にかかる苗代(ヘクタール当たり200万~240万グアラニー、苗1株25~30グアラニー)と 若干の農薬代ぐらいなもので、1ヘクタールほどであれば、除草や収穫の作業も家族労働だけで十分まかなえます。 近年綿花栽培は過去に比べ大量の農薬を散布しなくてはならなくなってきたため、経費が高く、さらに、長年綿花を栽培してきた農民の中には、 農薬散布後に頭痛など体に変調をきたしている人も見られ、綿花栽培を敬遠する農民が増えているように思えます。
現在、パラグアイで振興されているステビアの契約栽培は、最低価格と販売先が保証されていることに加え、ステビア栽培自体が比較的に簡単でもあり また、栽培に新たな技術や農機具も必要なく、さらに、他の換金作物と違い年に3回から4回に分けて収入を得ることのできる作物であるため、 小規模農民に適した換金作物と言えるのではないでしょうか。
長期的にみると、ステビアが今後にも高い水準で取引される保証はなく、栽培上の問題(成育中にステビアの株が3~6割ほど枯死する)も ミンガ・ボラでは発生しており、これを解決することが、現時点での最大の課題となっています。